【フルインベスト】時間分散投資の効果を過去のデータをもとに検証【S&P500】
最近まとまった資金が入ったけど、一気に投資していいのかな?
時間分散するなら、どれぐらいの期間で分散すればいいんだろう?
このような悩みにお答えします。
巷ではフルインベスト(全額一括投資)が最も良いと言われていますが、分かっていても実際に実行するのは難しいのではないでしょうか。特に額が大きければ株価急落の際に失う金額も多くなるので、より難しいでしょう。
これに対して1,2年に時間分散して投資すると良いというのを見かけることがあります。主なメリットとしては以下の2つではないでしょうか。
- 時間分散されることでリスクが減る
- 精神的なハードルが低くなる
ここで疑問なのですが、1つ目の時間分散のリスク低減効果ってどのくらいあるのでしょうか?ちょっと気になったので、過去のS&P500のデータを用いて検証してみました。
先に言ってしまうと、結論は以下となりました。
- 上昇相場:1年あたり年成長率の3分の2ぐらいでリターンが減る。
- 株価急落への耐性:リーマンショックでは1年あたり10%改善
なお、積立投資については以下の記事で解説していますので、こちらを参考にしてください。
https://shimazoh.hatenablog.com/entry/reserve-start/ https://shimazoh.hatenablog.com/entry/spxl-start/
それでは詳しく解説していきます。
時間分散の効果
はじめに、時間分散の基本的な性質についてシミュレーションを交えて説明します。
以下の2つのケースを用います。
- 上昇相場
- 下落相場
なお、冒頭でも申し上げましたが、本記事ではS&P500を例に検証します。
上昇相場:時間分散により利益が減る
上昇相場では時間分散をすると利益が減少します。時間分散により株価上昇の機会を失うためです。
具体的に、上昇相場真っ只中の2012年に100千ドルの投資をした場合を例に説明します。
以下のグラフの青色がフルインベストで、茶色が2年間の分散投資です。
2年間かけて分散投資した場合(赤)の方が、フルインベスト(青)よりも利益が少ないですね。
2010年代のような上昇相場では分散期間が長いほどリターンが悪化します。
下落相場:時間分散により損失が減る
投資開始後に株価が下落する場合は時間分散の恩恵を受けられます。下落時に安く株を買えるためですね。
ここでは、リーマンショック前から投資を始めた場合を例に説明します。
以下、先ほどと同様のグラフですが、開始がリーマン前の2008年になっています。
今度は2年間の分散投資(赤)の方が、フルインベスト(青)よりも利益が多くなります。
株価下落時と投資期間が重なっていれば、安く買えるため、分散期間が長いほど株価下落の影響を低減できます。
時間分散の効果の度合いを検証
ここからは時間分散の効果がどれぐらいあるのか検証していきます。
以下のグラフは、横軸の時期から時間分散投資を始めた場合の2020年9月時点のリターンです。
横軸:投資開始時期、縦軸:2020年9月時点のリターンとなります。
分散期間は「分散なし(フルインベスト)」「1年」「2年」「5年」の4パターンとしました。
一例として、2012年1月に投資開始した場合の2020年9月時点のリターンをグラフから読み取ると、以下のようになります。
- 分散なし:+176%
- 1年:+157%
- 2年:+137%
- 5年:+100%
先ほど説明したように、2012年以降は上昇相場なので、時間分散をするほどリターンが悪化していますね。
上昇相場:分散期間1年あたり12%程度悪化
2009年5月~2015年10月の上昇相場(緑で囲った期間)に投資開始した場合の平均リターンは以下のようになります。
1年あたりおよそ12%ずつ低下していくイメージです。
この期間において、S&P500は年率18%で成長しているので、その3分の2ぐらいになります。(理論的に計算できたりするんですかね)
株価急落耐性:分散期間1年あたり12%程度改善
続けて、最も気になる株価暴落への耐性について、リーマンショックを例に見ていきます。
投資開始時期2009年5月~2015年10月(赤で囲った期間)に着目します。
この期間の最大値、最小値、平均値は以下のようになります。
分散期間が長くなるほど最大値と最小値の差が小さくなっていますね。特に最小値が気になるところですが、1年あたり10%程度改善しています。
これを大きと見るか小さいと見るかは、個人のリスク許容度次第ですね。
個人的にはフルインベストは精神的なハードルが高いので、上昇機会を失いたくないことも考えると、半年~1年ぐらい分散すればいいかなと思いました。
また、リスクをとにかく減らしたいという方は、5年以上の分散をすればリスクを十分に減らすことができそうです。
ちなみに平均値は期待値とイコールになりますが、上下する相場では分散期間の影響はありません。
まとめ
本記事では時間分散投資の効果について、S&P500を例に検証しました。
以下、まとめです。
- 上昇相場:1年あたり年成長率の3分の2ぐらいでリターンが減る。
- 株価急落への耐性:リーマンショックでは1年あたり10%改善